ヘレナさん基調講演2019-ビッグ・ピクチャー・アクティビズム

今こそ、ビッグ・ピクチャーに目覚めるとき

現在の私たちが、より幸せで健全な社会に向かって離陸するためには、ビッグ・ピクチャー、大局に立って世界をみる視点が求められています。私たちの目の前には数えきれないほどの危機があり、それらは根幹でつながりあっています。その構図を理解すれば、問題の解決は私たちが思っているよりずっと簡単です。
 
私たちには時間があまり残されていません。環境問題や社会問題といった複数の危機を解決するには、ビック・ピクチャーに目覚めることが必要不可欠です。今こそ、都市中心型のグローバル化のシステムから離れ、社会の仕組みじたいをローカルへとシフトする地域経済の再構築をすすめるときです。
 
 

「狂気の貿易」が気候危機をもたらしている

 
グローバル経済の核にあるもの、それは規制緩和です。政府はカジノを作ったり、仮想経済を構築することに莫大な資金を投入しています。そのことが政府、そして私たち市民を貧しくさせていることに、私たち自身が気づいていません。
 
私たちは、左翼であれ右翼であれ、政治家がやることを盲目的に受け入れ、私たちの税金を補助金として企業に渡してしまっている。税金だけではなく、法律までもグローバルビジネスに都合がいいように変えさせています。これはすなわち、国内のローカルビジネスの衰退を意味します。
 
ビック・ピクチャーは左翼右翼を超えた次元のことです。それは生態系のあり方であり、人間の「しあわせ」の追究です。ビッグ・ピクチャーの視点に立てば、私たちが進むべき道は、グローバル化された世界ではなく、もっと小さなシステムにあることが見えてきます。

 
現在の経済システムでは、大企業が化石燃料を使い、まさに地球をまたにかけてグローバルに取引しています。しかし、その実態は「狂気の貿易」にほかなりません。アメリカでは何十万トンという牛肉を輸入しながら、同時に同じ量の牛肉を輸出しています。たとえば、魚をどこか別の国に送り、骨を取ってもらったものを送り戻す、リンゴを他の国に送り、そこで加工されたものを送り戻す。たとえば、イギリスから南アフリカに送られて、そこで洗われたものをまたイギリスに戻すということが起きているわけです。しかし、この飛行機や船などの商品輸送にかかわるCO2が計算されていません。
 
気候変動についてのアクションとして、個人の行動については言及されますが、大企業の行動には言及されることがありません。たとえば、CO2削減のために車を運転しない方がいいとか、レジャーには公共交通機関でということが言われます。けれども、ほとんどの人が今の経済システムそのものを変えることには無関心です。
 
狂気な貿易システムは政策にも連鎖します。グローバル化という名の効率化が失業を増大させ、年金者を不安にさせます。人々から自尊心を奪えば、生計を立てる術を奪えば、彼らは暴力に走ります。その暴力はコミュニティに向けられるかもしれませんし、女性に向けられるかもしれません。
 
こうやって競争し合うシステムではお互い敵になってしまいます。私たちはこれらの問題を個別に解決しても、根本を解決することはできません。問題はすべて経済システムに起因しています。この点に気づくことができれば、同時に希望を見出すこともできるのです。

食のグローバリズムは、多様性と雇用を奪う

 
ここで注意しなくてはならないのは、私たちの闘いとは、グローバル企業やグローバル金融で働いている個人ではないことです。デュポンやモンサントで働いている人々は、ここにいる皆さんや私とさほど違うような人達ではありません。闘うべきは組織であり経済システムです。
 
メガバンクやグローバル企業は、生命の多様性を尊重することはできません。組織的に不可能です。ですから、ビジネスの規模をどんどん小さくしなければいけません。自然と人間という資本を使い、我々のニーズを満たす経済システムは、地球が持続可能でこそ可能です。
 
 
グローバル経済では大規模なモノカルチャーが推奨され、毎日のように不必要で無茶な輸送が行われています。「モノカルチャーは生産性が高い」という触れ込みは、グローバル経済がもたらした一つのウソです。一つの土地で多品目栽培畑、他方でモノカルチャーの畑をつくり比較をすれば、生物多様性のある方がより生産性が高いことは一目瞭然です。
 
もちろん、その多品目栽培の畑には人手も必要です。つまり、モノカルチャーという新しい現代農業は、効率化による失業を生み出し、農薬や化学肥料の使用により環境汚染を生み出しています。健康に悪い加工された食品を、健康でローカルな所で作られた食品よりも安く届けているのが、食のグローバルシステムの正体です。

ローカルムーブメントは草の根から

 
ローカルフードムーブメントは世界中でどんどん広まっています。毎日のように新しい活動を耳にします。何百もの活動が世界中で展開されています。私が希望を感じるのは、これらの運動が政府や大手メディアによってではなく、人々が草の根レベルでどんどん目覚めている点です。輸送を減らし、プラスチック包装を減らし、化学薬品を減らしながらも生産性を上げ、有意義な食卓を生み出すことができる。ローカル経済は可能なのです。
 
大手メディアは「人々の農業離れ」を指摘します。でも、実際に私が知っている若い世代は、都市を離れ、デスクワークを離れて、農的生活をはじめている。彼らは本当に幸せそうです。最近、韓国でも若い活動家たちと会う機会がありました。皆さんとても活き活きとしていました。
 
もちろん課題もあります。ローカルフードのイニシアティブには、ビジネスとしてのネットワークが必要です。そして地域の金融によるサポートも必要です。45年間ローカリゼーションを進めてきていますが、地域通貨はまだ良い戦略とは考えられていません。もっと他にも良い方法があるからです。
 
ローカルビジネスのアライアンスを強化していくこと。地域でつながることでローカルビジネスの実体を作り、そして地域でお互いに頼り合うことで小さな独立したビジネスをつなげていく。そして地域の消費者やサポーターがこのエコロジカルな経済を支えていく。これこそが地球規模で展開できるローカルな「しあわせの経済」です。これは一人だけの経済ではありません。地球に住む私たち一人ひとりの権利なのです。

 

ビッグ・ピクチャー・アクティビズムに参加しよう

 
うつや自殺は世界中で起こっている現象です。現代のシステムにプレッシャーを感じているせいかもしれません。希望があることに気づけていない人々がたくさんいます。私たちはビッグ・ピクチャーをもっと多くの人々に伝えていくことが急務です。私たちが今、どういうシステムにいるのかを理解し、小さな地域のイニシアティブが育っていること、ローカルからの変革が可能であることを実際に見せていくのです。
世界中で人々は動き始めています。「しあわせの経済」を創ろうとしています。コミュニティを再構築する際に大切なのは文化です。音楽や歌、そしてお祝いごと。かつて私たちの周りにふつうにあった時間は、世代を超えて若者や年配の人が交流できる場でもありました。そういった楽しみの時間や文化につながり直すところから始めましょう。
 
私たちにできること、それは、まず私たち一人ひとりが一歩、行動することです。そうしたら、同じような気持ちを持っている人と会うことができるでしょう。そして、数人集まったらグループをつくって、定期的に集まりましょう。私たちには何ができるんだろう、生活を良くするためにはどうしたらいいのだろう、と自由に考え、試してみたりするのです。
 
ローカルを核にしたムーブメントは着実に広がっています。そして、時にこういった行動はとても早く成長することがあります。
 
最後にみなさんに伝えたいことは、「あきらめないで」ということ。既存のシステムが大きいからといって諦めずに、私たち草の根の力を信じましょう。個々の違いを超え、ビックピクチャーの中でつながる活動をしていきましょう。
 
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