【レポート】自由学園大学生たちが学び、感じ、問い直した「しあわせの経済」とは?

11月9日、10日の2日間に渡って、明治学院大学横浜キャンパスにて行われた「『しあわせの経済』フォーラム2019」に行ってまいりました。フォーラムに参加した自由学園最高学部(大学部)の学生5人で、簡単なレポートをさせていただきます。

当日、会場はほぼ満席になっており、よく見渡してみると年齢や国籍に関係なく、興味を持った様々な方たちが参加していました。

ローカリゼーションが世界的に注目を集めています、それは、グローバル経済、コミュニティーの断絶、環境問題など様々な現代の問題に対し、多くの人たちが疑問を抱き始めたからではないでしょうか。

その疑問は、例えば「経済的に豊かになれば、幸福になれる」というような、これまで信じてきた人々の諸価値に懐疑的になってきた、ともいえると思います。

私なりにこのフォーラムを簡単に言い表すならば、

「本当の価値とは何だろう、一歩立ち止まって考えてみない?」

といったところでしょうか。

 

「本当に大切なものは何か」「私たちはどう生きるべきか

そんな疑問に、全く新しいシステム、技術を思い浮かべるのではなく、一度立ち止まって、既にあるものから考えよう、そんな風に共有し考えることができたのが、このフォーラムだったな、と私は思います。


Photo: Shusei Yamada

 

photo 奥留遥樹

ヘレナ・ノーバーグ=ホッジさんと辻信一さんによって集まったゲストの方々は、大学教授、国際ジャーナリスト、経済学者、ファッションデザイナー、音楽家、といった、実に様々な背景を持った方々で、多角的な視野から「ローカリゼーション」を知ることができました。

私が印象的だったのは、映像作家でダンサーの亭田歩さんが仰っていた、ある先住民族の思想です。ローカリゼーションを推奨しているこのフォーラムですが、ローカリゼーションの方向に傾きすぎるのもよくはないといいます。それは、「どのような素晴らしいものでも、それが大きな力になってしまうと、やがてその力はひずんでしまう。」という考えからでした。どちらが良い、悪いの、二項対立ではなく、そのどちらにおいても重要な役割があるといいます。

グローバリズムのグローブとは地球をあらわす語です。グローバリズム=悪とみなすのではなく、方法やシステムにこだわることなく、良いところは吸収する、「なんちゃって」の精神が現代には必要であると言っていました。

 

力が大きすぎると、それはやがてひずむ、

まさに現代のグローバル経済がそれを体現していると思います。大きすぎるがゆえに、自分のささいな行動が人や環境に甚大な影響を与えており。そして大きすぎるがゆえにそれが捉えづらいのです。

全体を捉えることは非常に難しいことではあります。しかし今回のフォーラムで、知ることは大切であると思ったのと同時に、私たちは知ってなければならないと思いました。現代社会に疑問を感じつつも必死に生きている人はたくさんいると思います。しかしそんな人であっても、能動的な知識の獲得がなければ、具体的な行動へとつなげることは難しいでしょう。そんな人のためにも、このようなフォーラムや活動が人の目につくよう、灯台のような存在にますますなれば良いなと切に思います。


分科会レポート

2日目を迎えた「しあわせの経済国際フォーラム」、この日は12の分科会が行われました。分科会の内容の要約と感想を織り交ぜながら、いくつかレポートさせていただきます。

 

「原発事故以後のエコロジーと地域」

この講演は、4人のゲストを迎えて行われました。福島原発告訴団団長の武藤類子さん、一般社団法人ユナイテッドグリーン代表の山田周生さん、Fridays for Future Tokyoの岩野さおりさん、そして城南信用金庫企業経営サポート部上席調査役の佐藤隆美さんです。加えて、FoE Japanの吉田明子さんがモデレーターを務めました。

講演は、まず各ゲストが自己紹介を兼ねつつそれぞれの取り組みについて語り、その後それぞれの活動に対して質問したり、ディスカッションしたりする形で行われました。

口火を切ったのは、福島原発告訴団団長の武藤さん。福島第一原子力発電所事故の責任をめぐり、いまも裁判で争っています。事故から8年が経った現在も、事故は全く終わっていないのだと感じます。「事故は私たち大人の世代が終わらせないといけない」と語っていたのが印象的でした。

また彼女は、原発事故によってライフスタイルがいかに変貌してしまうのか、実際に自分が経験したことを語りました。彼女は事故以前から、出来る限り電力会社に頼らない生活を実践していましたが、事故によって薪が使えなくなったり、畑が使えなくなったりしたとのこと。原子力という技術が自然に与える影響の大きさを感じさせられました。

 

Friday for the Futureの岩野さおりさんは、日本における同団体の活動内容と様子をシェアしました。この活動の発起人であるグレタ・トゥーンベリさんも学生ですが、岩野さん自身も現役高校生です。また当日も来場者に署名活動を呼びかけており、次世代を担う若い世代がこのように活躍していることは、とても重要なことだと感じました。

 

一般社団法人ユナイテッドグリーン代表の山田周生さんは、被災地における「未来循環型地域づくり」の活動に取り組んでいます。彼はもともと、廃油から作るバイオディーゼル燃料を作り世界をまわるプロジェクトに取り組んでいましたが、プロジェクトの最中に東日本大震災と遭遇したことがきっかけに、持続可能なコミュニティの作り方に取り組むようになったそうです。

具体的には現在、岩手県釜石市に古民家をリノベーションしたECOハウスをつくっています。自家発電にも取り組んでおり、なんと電力供給量は200%程度に達しているそうです。具体的なローカリゼーションが一部すでに成功している様子が伺えました。

 

最後に、城南信用金庫の佐藤隆美さんが同社の取り組みについて語りました。城南信用金庫は、「脱原発宣言」をし、クリーンエネルギーの導入を目指すと発表した、ユニークな金融機関です。佐藤さんは、「社会・環境問題の解決こそ企業の目的」であると力強く語り、同社の取り組みを紹介しました。

例えば、昨今世界中の大企業が加盟して話題となっている「RE100」に日本企業で初めて加盟したとのことです。RE100に加盟するためには自社で使用する電力を100%再生可能エネルギーにする必要があり、その難しさから日本企業では8社に留まっているとのことですが、この動きの今後の広がりに期待が高まりました。

 

また本講演を通して、武藤さんの「エコな暮らしをしなきゃいけないからするのではなく、楽しいからする、というふうにしていきたい。」という言葉が印象に残りました。いまの社会では、環境破壊に対応するための「エコな暮らし」との意味が強く、それは気候変動の危機が差し迫っている現状では必要なことです。

しかし、同時にこういった動きを広げていくために、「エコな暮らし」の良さや楽しさをどんどん共有し、人々が自発的に「エコな暮らし」を選択できるようになることが大切なのだと感じました。


「ローカリゼーションと教育ー子どもを真ん中に社会を見据えて」

教育分野の分科会「ローカリゼーションと教育ー子どもを真ん中に社会を見据えて」では、高橋和也さん(自由学園学園長)、ムー・ソンブーンさん(INEB事務局長)、菅間正道さん(自由の森学園高校教頭)、田上凪さん(自由の森学園卒業生)、モデレーターの小野寺愛さん(そっか共同代表)のメンバーで、「次世代の生きる力はどのようにして育まれるのか」をテーマに話が繰り広げられました。

 

始めに、小野寺さんから分科会タイトルの「子どもを真ん中に社会を見据えて」について解説がありました。「子どもを育てるには1つの村まるごと必要だ」という言葉をもじったものだそうで、「今は社会が痛んでいて、それを変えていくには子どもの力が必要なんじゃないか」という含意だそうです。

 

その後、各登壇者が自身の団体の活動を紹介しました。印象的だったのは、ムーさんのお話。教育は学校で行われるもののように考えられているけど、教育は学びのプロセスであり、学びは最初の呼吸から最後の一息まで、生涯得ていくものである。この考えにはとっても共感しました。経験すること全てが「学び」、なんて素敵な考えでしょうか。

 

最後に、「自分、仲間、社会への信頼を育むのに、どんな学びや経験が必要か」「こうした実践をどう実社会につなげていくか」という2つの問いを巡って登壇者の意見交換が行われました。

ここで印象的だったのは、菅間さんのお話。自由の森学園では、3つのR(Response, Rights, Respect)を大事にしていて、菅間さんは「リスペクト」を特に重視しているそう。「学生が「ディスる」という言葉をよく使うけれど、学生自身はその語源をよく知らない。そこで調べてみると、「ディスリスペクト」の意味だった。リスペクトはないのに、「ディスリスペクト」は満ちている。これじゃあいけない」というお話は、学生である自分にとってとても考えさせられるものでした。

 

学校教育を受けている真っ最中の自分にとって、この分科会はとても有意義な時間になりました。教育の目指すところや自身が受けている教育の課題を考えながら、よりよい学びを得られるように学生生活を送りたいと思いました。


「グローバルからローカルへ 〜日本における大転換への道筋

 

この分科会では、ヘレナ・ノーバーグ=ホッジさん、山田正彦さん(元農林水産大臣)、堤未果さん(国際ジャーナリスト)、モデレーターの植草一秀さん(「オールジャパン平和と共生」運営委員)のメンバーで、グローバルからトーカルへの変換の道筋が紹介されました。

 

種子法や種苗法の問題に関してはほとんど知識がなかったため、「こんなことになっていたのか」と暗澹たる思いになりましたが、山田さんが紹介された「種子を守る会」の実践からは大きな希望を感じました。「種子を守る会」は、全国各地の自治体条例で種子を守ろうという動きをしていて、実際にその成果を挙げているそうです。

堤さんからも、地方自治体レベルで行えるムーブメントがいくつも紹介され、今後私たちが、行政に対してどのように働きかけることができるのかという道筋を知ることができました。

 

植草さんのお話では、自分自身の変容を周りへと派生させていき、社会全体、政治全体を変えていくことの重要性が話されました。「ガーベラ革命」が目指す「誰もが笑顔で生きてゆける社会」は、とても重要な考えだと思います。

ヘレナさんのお話では、グローバル経済によって起こっている問題は大きすぎて、「もう対処するには遅すぎる」「これが人間の本性だからしょうがない」などの悲観的コメントが漏れ聞こえてくるけれど、「私はどうするか」「私や私の子が幸せに暮らすためには何ができるか」というように自分自身の行動をそれぞれが考え変えていくことが重要であり、そこから希望が生まれてくるということが話されました。

 

全体を通して、「半径5メートル」という言葉を強く思い起こしました。私たちにできることはたくさんあるはずです。まずは自分自身の行動から、それから徐々に周りへとアクションを広げていくことで「ローカル」への転換が実現するのではないでしょうか。

希望を捨てず、自分のできることからやっていこうと思いました。

 


 

「羽黒山伏・星野先達と、歩く、感じる、ローカル学」

 

「羽黒山伏・星野先達と、歩く、感じる、ローカル学」に参加させていただきました。

この分科会は、学校の外に出て行うということで、校舎の外、南門にて集合しました。私がいった時には既にすごい人だかりができていました。人気ぶりがうかがえます。

「みなさーん、頭を使いたくないひとー!」

「はーい」

「この分科会では、心と体だけを使い、感じる知性ということでやっていきます」

説明してくださったのは、全身緑色のコーデをしている、ゆっくり小学校ようむいんの上野宗則さん。あとで聞いたら、山をイメージしたコーデだったそうです。

その他に、今回教えてくださる先生方は羽黒山伏の星野先達さん。ヨガ講師のぬん=榊原慶祐さん。歌手、音楽家の堀田義樹さん。映像作家、ダンサーの亭田歩さん。他の先生も、負けず劣らず個性の強い、パワーを感じる人ばかりでした。

そう思っていると、星野さんがおもむろに持っていた法螺貝をひと吹きし、移動開始。これは期待が高まります。

明治学院大学のすぐ裏にある、舞岡公園に向かいました。距離的には近いとおもいますが、ちょっとした登山道です。

目的地に到着すると、それまで賑やかだった空気が一変しました。ここからは切り替えです。

星野さんの指示で、開けた方向に向かって、配られたプリントを一斉に読み上げます。

 

それが終わるとまた別の場所に移動をしました。

こんどは、読み上げる般若心経に合わせて、ダンサーの方に踊っていただくということになりました。皆さん感じるままに踊っていらっしゃいました。

 

次は、ぬんさんによるヨガ体験をすることに。

あぐらをかいて深呼吸をして、心を落ち着かせます。

自分を単なる空気の通り道の筒として捉えてみるといいですよ、というアドバイスのもとやってみると、だんだん心が落ち着いていきます。

次は堀田さんによるレクチャーです。

「しあわせの経済フォーラム」の1日目の朝にも行った、マントラを一緒に唱えるというものでした、

「ロカ サマスタ スキノ ババントゥー」

意味は、皆が幸せでありますように、私がそれに貢献できますように、という今回のフォーラムにぴったりのマントラでした。

 

次は亭田さんです、なんだか色々な国を回っているような感覚になります。亭田さんは8年間旅をしたことがあったそうで、今回レクチャーしてもらうのはそこで出会った先住民の方から教えてもらったものだそうです。

みんなで輪になり、真隣の人とではなく、ふたつ隣の人と手を繋いで輪になります。そうすると、みんなでつなぐ手が二重螺旋になってDNAのような形になります。指定されたハミングをして目を閉じて揺れます。

そして亭田さんがひとこと、

「目を開くともうそこにはいままでの知っていた世界はありません。そこはいままでとは違う新しい世界がひろがっています。」

確かに、なんとなく新境地が開けたような。

というか、この講義に参加した時点で僕にとってはもう新しい世界です。

この授業だけで本当に様々な体験ができました。てんこ盛りでしたが人と人、人と自然との繋がり、という面ではどれも共通しているように思いました。自分がちっぽけで非力な存在だということを自覚することで、繋がりを大切にしていかなければいけないということを再確認できた気がします。

 


 

「ローカルビジネス、ローカル経済」

この分科会「ローカルビジネス、ローカル経済」では、トークセッションが行われました。様々な視点から縦横無尽な議論が展開され、とても密度の濃い時間でした。

 

登壇したのは経済学者であり社会起業家でもあるマイケル・シューマンさん、面白法人カヤックの代表取締役CEOを務める柳澤大輔さん、そして公益財団法人信頼資本財団理事長を務める熊野英介さんの3人。さらにモデレーターとして、ウェブマガジン『greenz.jp』の編集長である鈴木菜央さんが加わりました。

 

セッションの進行は、まず各ゲストが自己紹介を兼ねつつそれぞれの取り組みについて語り、その後テーマについてディスカッションする形で行われました。

 

セッションの中で、マイケルさんはいかにローカリゼーションの経済的な恩恵が大きいか、またどうすればローカリゼーションへ参加できるのかについて語ります。マイケルさんのお話はすべて具体的な視点から語られ、私たちのお金がいかにグローバルへ流れ出ているか、数字を用いて説明していました。さらに会場の人々に「貯蓄をどう使っているか」「どの銀行に預金しているか」などの質問を投げかけ、ローカリゼーションの重要性を聴衆に訴えかけようとする姿勢が印象的でした。

また熊野さんは、より広い視点から、今後経済がどのように変化し機能するのかについて語ります。人々は経済的な価値観だけでものを選んでいるのではなく、例えばコンビニの飲料(価格は高いが、時間を買っている)のように、実はすでに社会的な動機からものを選んでいる。また今までは市場的ニーズに対する商品がメインだったが、これからは社会的ニーズに応えるようなものが重要になるという主張は、例えば環境に配慮するエシカルファッションの登場などで、既に現実のものとなりつつあると感じました。

 

とりわけ印象的だったのは、柳澤さんが語った新しい資本主義のあり方でした。ローカリゼーションを掲げるこのフォーラムで、資本主義はともすれば悪者として扱われることが多く、ローカリゼーションの対義語として用いられることも少なくありません。

しかし彼は、止めなければいけないのは資本主義ではなく「金融資本主義」だと語ります。つまり金融資本だけを評価していることが問題であり、代わりに「社会資本」や「環境資本」が評価基準になれば、資本主義そのものは決して悪者ではない、ということです。現代経済の問題点を明確にするに留まらず、資本主義の競争原理を良い方向に利用することができる可能性までもが示されていたように思います。「鎌倉資本主義」を実践している彼ならではの主張で、説得力がありました。

 

またこのフォーラムを通して、重要なポイントとなったのが「ローカリゼーションの定義とゴール」です。柳澤さんの表現を借りるなら、地元に密着しているが環境に配慮のない企業と配慮のあるグローバル企業では、どちらがより「ローカル」だといえるのでしょうか。また市場競争のあり方やローカルの規模感など、ローカリゼーションという言葉の解釈が人によって大きく異なることが明らかになったと感じます。

しかし同時に、そのいずれも「しあわせの経済」を目指していることは共通しています。今回のように異なる価値観を持つ人々がさらに議論を深めていくことで、よりよい経済のあり方が明らかになっていくのではないでしょうか。

レポート執筆:自由学園最高学部 石丸雄大、上野太誠、齋藤凛太郎、膳場美緒、塚平陽叶里、西上耶弥

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