「ラヒール・ワタン~祖国、我を去りて~」イラク人画家が描く心の平和

みなさん、こんにちは!フォーラムの本チラシができあがりました。中央にある絵は、イラク人アーティスト、ハーニー・ダッラ・アリーさんの作品です。今回、ハーニーさんを実行委員会に紹介してくださったNPO PEACE ON の相沢恭行さんに、ハーニーさんの紹介と、本フォーラムに向けたメッセージを寄せていただきました。

1日目には、相沢さんがハーニーさんからのアート作品とコラボで出演くださいます。どうぞお楽しみに。
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「ラヒール・ワタン~祖国、我を去りて~」イラク人画家が描く心の平和

 

「私がワタン(祖国、故郷)から去ったのではない。ワタンが私から去っていったのだ」

イラク戦争直後のバグダードで出会ってから13年来の友人となる画家ハーニー・ダッラ・アリーは、今春の来日個展ツアーのアラビア語タイトル「ラヒール・ワタン」について、このように話してくれました。

作品にはハーニーの心のワタン、原風景が詰まっています。まずはイラクの象徴で「生命の樹」とも呼ばれ古くから人々の命と大地を繋いできたナツメヤシの樹です。11年前京都で手すきの和紙に感銘を受けたハーニーは、やがてナツメヤシの手すき紙と出会い、その上に農婦たちの顔を描くようになりました。やがて彼は幼き日々に母親が毎朝窯で円いホブズ(パン)を焼いてくれた記憶に立ち返り、円い板を作品の土台にしました。

母の胎内から宇宙につながる大いなる円環に響きわたる息づかいを感じながら、今この地上で苦しむ全ての命の平和を祈る農婦の表情。個展会場では、「聖母マリアにも、菩薩や観音様にも見える」という感想を多くいただきました。ハーニーは答えました。

 

「私はムスリムだが、全ての宗教の源はひとつであり、日々を平和に生きていくためにある。どう解釈しても、平和な気持ちになったとしたらそれは私が心を開いて絵を描いたからであり、あなたも心を開いて絵を観てくれたということです。

 

私にとってアートは世界を変えるための武器です。芸術家はただ美しいものをつくるだけではだめで、人の心を動かすメッセージが要ります。私のメッセージはサラーム(平和)です。平和でなければ私たちはこの地上で共に生きていくことはできないからです。

 

今、人を殺してもいいという間違ったメッセージが世界に広がっています。私は、心のワタンに輝く女性たち、命を育み続けてきた働く農婦たち、戦争で苦しみ、子や夫を亡くした悲しみ深く、平和を求める気持ちがひときわ強い母親たちを描いています。彼女たちの内面の美しさを表現することで、観る人の心が平和になると信じています。心の平和が今の世界にはどうしても必要なのです。

 

死と破壊に疲れ果てた我が祖国は、争い続ける人々を残しどこかへ消え去ってしまいました。いまイラクに戻っても、あの美しいワタンはもうどこにもないのです。しかし、私が心のワタンを描き続け、あなたと心を開きあえるのならば、どこにいようとも、国境をはじめ争いの源である人々が拵えた全ての境界線を超えて、この地上が、いまここがたちまちに私たちのワタンになる。ワタンとは人なのです」

 

「ラヒール・ワタン~祖国、我を去りて~」。これは戦禍に苦しむイラクやシリアなど中東アラブ世界はもちろん、3.11原発事故以降はここ日本でもわかりやすくなりましたが、今や世界ぜんたいで共有しているグローバルなテーマではないでしょうか。

ハーニーはイラクでの戦争と長年の避難生活という自身の体験を嘆くのではなく、絵画表現によって「心の平和」という希望のメッセージに昇華させました。この壊れゆく世界を、僕たちが共にのり越え生き抜いていくための、大切な答えを届けてくれました。

 

この度、ハーニーの絵画作品をこの「しあわせの経済」世界フォーラムのメインビジュアルとして使っていただけること、心から感謝しております。それぞれのローカルから届けられた祈りが、絵の中のイラクの農婦の祈りを通して、グローバルに広がるこの地上に生きるすべての命に降り注ぎ、心に平和の音が響き渡りますように。

NPO PEACE ON代表
相沢恭行


■ハーニー・ダッラ・アリー(イラク/アーティスト)

1969年 イラク・アンバール県ヒートに生まれる
1990年 バグダード造形芸術院卒業
2004年 ポーランド文化省の招待によりワルシャワで美術品修復技術を学ぶ
2005年 イラク情勢悪化しヨルダン・アンマンに一家で避難
初来日し、東京と札幌で個展「混沌からの光」
2006年 2度目の来日。東京でイラク現代アート展、京都でイベント参加
2006年~2015年 ヨルダン、イラク、レバノンなどで個展多数
2016年 ナツメヤシの手すき紙を使用した新シリーズ「ナツメヤシと農婦」日本各地で展示
2017年 3度目の来日。京都、仙台、東京で個展「ラヒール・ワタン~祖国、我を去りて」